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地盤改良の基礎知識

地盤改良の基礎知識

今回は『地盤改良の基礎知識』について解説します。

 地盤改良とは

地盤改良とは、建物や構造物を建設する際に、その基礎となる地盤の性質を改善するための方法を指します。建設工事においては、構造物の設計・施工に先立ち、地盤改良の必要性を検討し、基本的な設計・施工の方針および条件を決定します。そして、まず地盤を改良するか杭基礎などを用いて支持するかを検討します。杭基礎やケーソン基礎は最も典型的な軟弱地盤用の基礎であり、大きな荷重を受ける場合などの重量構造物の基礎としてよく用いられます。しかし、杭基礎やケーソン基礎は一般的に高価になるため、構造物の重量がそれほど大きくない場合は、地盤改良工法を用いた方が経済的であることが多いです。

 地盤改良原理の分類

地盤を改良する際に改良目的により、どの原理で行うか検討し、原理に基づいた工法を選定します。

①置換(良質な土に置き換える)
②圧密脱水(粘性土の圧密、砂質土の地下水位低下)
③高密度化(締固め、間隙の減少)
④固結(注入・混合・撹拌による固結)
⑤補強(異種材料による補強)

 

 地盤の区分

地表からおよそ1~3mを浅層または表層と呼び、それより深い地盤を深層とすることが多いですが、
浅層地盤と深層地盤の区分は必ずしも明確ではありません。

 

 材料の分類

地盤改良工法に用いられる材料は大きく以下に分類されます。
①土、砂、砕石 ④セメント ⑦ジオテキスタイル ⑩植物
②鋼 ⑤石灰 ⑧プラスチック、高分子 ⑪産業廃棄物
③コンクリート ⑥アスファルト ⑨水ガラス

 

 地盤改良工法

地盤改良工法には様々な種類がありますが、その中からいくつか解説します。

 ソイルセメント壁工法

アースオーガーマシンまたは、それに類する機械で地盤を削孔し、その先端よりセメント系スラリーを注入しつつ、削孔土砂と混合撹拌して、土の中に連続して改良体を造成する工法です。
止水性が高く、周辺地盤に対する影響が少ないのが特長です。

工法分類
工法名 形状 構築方法 壁材 工法概要
TRD工法 等厚式 原位置撹拌 ソイルセメント 形鋼 地中に立て込んだチェーンソー型カッターを横移動させ、溝の掘削と固化液を注入し、現位置土と撹拌、H形鋼等の芯材を挿入、等厚壁を造成する。
SMW工法 柱列式  ソイルセメント 多軸混練オーガー機で削孔、先端よりセメントスラリーを吐出、原位置土と撹拌、芯材を挿入し、柱列壁を造成する。等間隔で削孔し、その間をラップさせながら再度削孔する。 
 CRM工法 壁式
置換
ソイルセメント(掘削土再利用) 掘削は水平多軸回転カッターや懸垂式/ロッド式クラムシェル、杭基礎のオールケーシング等で行う。現場で発生した掘削土にセメントミルクを添加撹拌し打設する。掘削土の再利用率は70%となる。 

<ソイルセメント壁工法(TRD工法)施工イメージ図>

 

 深層混合処理工法

撹拌翼先端からセメント系固化材を吐出し、土と混合攪拌させ、改良体を地中に造成し、構造物を支持する工法です。工期が短く、経済性が良いです。また、振動や騒音が少ないのも特長です。
一方で、有機質土などの特定の地盤では固化不良をおこす場合があり、また改良する土質によっては有害物質である六価クロムが溶出してしまうリスクがあります。

工法分類
工法概要
スラリー系 固化材ををスラリー状にし、油圧ポンプで圧送し軟弱土と固化材を攪拌翼で均一混合させ、所定の強度の改良体を造成する。
粉体系 固化材を粉体のまま空気輸送し、撹拌翼で掘削した空間に充填し、土と混合させた改良体を造成する。

<深層混合処理工法施工イメージ図>

 

 高圧噴射攪拌工法

高圧噴射撹拌工法とは、地中で液体の固化材等を高圧で噴射し、地盤を掘削しながら混合・撹拌することで、地盤の強化、改良体の造成を図る工法です。
プラント設備や施工機械がコンパクトで比較的場所をとらず、振動や騒音が少ないのが特長です。

注入工法

注入管の構造により以下の通りに分類されます。

切削工法 工法概要 有効径
単管方式 硬化材液 セメント系硬化材を噴射しながら、地盤を切削・撹拌すると同時に円柱状の固結体を造成する。 有効径300~1,200mm
二重管方式 硬化材液+ 圧縮空気 空気を伴った超高圧硬化材液を地盤中に回転して噴射させ地盤を切削すると同時に、円柱状の固結体を造成する。
有効径1,000~2,000mm
(S-JET工法35~3,500mm可)
三重管方式 圧縮空気+ 高圧水 空気を伴った超高圧水を地盤中に回転して噴射させて地盤を切削し、そのスライムを地表に排出させることによって地中に人為的に空間を造り、その中に硬化材を同時填充させ円柱状の固結体を造成する。
有効径1,000~2,000mm
(S-JET工法50~5,000mm可)

 

硬化材料
硬化材は経済性、公害性、強度特性、作業性等からセメント系硬化材を使用します。

<高圧噴射攪拌工法(二重管工法)施工イメージ図>

 

 薬液注入工法

薬液注入工法とは、ボーリングで設置した注入管を通して、硬化時間を調整できる注入材を地盤中に圧入し、地盤の止水性や強度を増大させること等を目的とした工法です。
施工設備が簡単・小規模で振動や騒音が少ないため、狭い場所・空間、交通・住環境への対応性が良いのが特長です。
薬液注入の実施に際しては、「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針(昭和49年7月10日(旧)建設省)」に従って行う必要があります。

注入方式
薬液注入工法として検討されるのは主に「二重管ストレーナ工法」と「ダブルパッカー工法」です。
注入方式は土質条件、周辺環境から選定します。
工法概要
二重管ストレーナ工法 小型のボーリングマシンを使用する簡便な工法で工費も安価で、最も一般的な工法。
ダブルパッカー工法 削孔能力の高いロータリーパーカッション方式で削孔するため、注入深度が25m以
上となる場合や削孔地盤が硬質である場合や高い注入効果を期待する場合に用いられる工法。

 

注入材料
水ガラス(珪酸ソーダ)を主材料とする「薬液」を使用します。

<薬液注入工法(二重管ストレーナ工法)施工イメージ図>

 

以上、今回は地盤改良の基礎知識についてご紹介しました。

 

参考文献)
「地盤改良工法便覧」日本材料学会土質安定材料委員会(1991年7月)
「推進工法体系Ⅱ計画設計・施工管理・基礎知識編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「月間推進技術Vol.29 №7」(公社)日本推進技術協会(2015年7月)
「月間推進技術Vol.30 №7」(公社)日本推進技術協会(2016年7月)
「月間推進技術Vol.34 №7」(公社)日本推進技術協会(2020年7月)

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