今回は『杭基礎工事の基礎知識』について解説します。
杭基礎工事とは
主に軟弱な地盤における構造物の建設において、地下の硬い地盤まで深く杭を打ち込み構造物を支える基礎工事のことを指します。使用される杭や工法は以下の通り、いくつかの種類があります。地盤の状態などによって杭の種類や工法を検討します。
杭の支持方法
支持杭
杭の先端を支持層まで到達させ、先端に働く反力(先端支持力)で支持する杭です。
摩擦杭
杭と地盤の摩擦力によって支持する杭です。支持層がかなり深く、支持杭の打設が難しい場合に採用されることが多いです。支持杭に比べ、杭長を短くすることができるので費用を抑えることができます。しかし液状化リスクのある地盤では、地震発生時に摩擦力が働かないため、摩擦杭は採用できません。
杭の材質と形状による分類
杭の材質と形状は以下のように分類されます。
杭基礎 | 鋼杭 |
鋼管杭 | |
H形鋼杭 |
|||
コンクリート杭 |
既製杭 | RC杭(鉄筋コンクリート杭) | |
PHC杭(高強度プレストレストコンクリート杭) | |||
場所打ち杭 | |||
合成杭 | 鋼管ソイルセメント杭 | ||
SC杭(外殻鋼管付コンクリート杭) |
施工方法による分類
杭基礎 | 既製杭工法 | 打ち込み杭工法 | 打撃工法 | コンクリート杭 |
鋼管杭 | ||||
バイブロハンマ工法 | 鋼管杭 | |||
埋め込み杭工法 | プレボーリング工法 | コンクリート杭 | ||
中堀り工法 | コンクリート杭 | |||
鋼管杭 | ||||
鋼管ソイルセメント杭工法 | 合成鋼管杭 | |||
回転杭工法 | 鋼管杭 | |||
場所打ち杭工法 | 機械掘削工法 | オールケーシング工法 | コンクリート杭 | |
リバース工法 | ||||
アースドリル工法 | ||||
人力・機械掘削工法 | 深礎工法 |
既製杭工法
既製杭は、あらかじめ工場で製作された杭を指します。掘削した穴の中に、既製杭を沈設する工法です。
(打撃工法・バイブロハンマ工法)
長所 | 既製杭のため、杭体の品質が良い |
施行速度が速く、施工管理が比較的容易 | |
短所 |
振動、騒音が伴うため市街地での施工が困難 |
長尺杭の場合、継手が必要となる | |
大口径の杭の施工には不向き |
<打撃工法イメージ図>
(中堀り杭工法・プレボーリング杭工法・鋼管ソイルセメント杭工法)
長所 |
振動、騒音が小さい |
既製杭のため、杭体の品質が良い | |
大口径の杭の施工が可能 | |
短所 |
泥水、排土処理が必要 |
長尺杭の場合、継手が必要となる | |
支持力が小さい |
<プレボーリング工法イメージ図>
先端に主軸の2倍の径の翼があり、主軸を回転させ掘削する工法です。
長所 | 無排土、回転貫入のみで施工管理が簡単、将来不要な場合は逆転で引抜可能 |
短所 |
地中障害物への対応が困難 |
場所打ち杭工法
(オールケーシング工法・リバース工法・アースドリル工法、深礎工法)
場所打ち杭は、掘削した穴の中に鉄筋かごを挿入し、コンクリ-トを流し込んでその場で杭を製作します。現場に応じて長さを調整することができます。
長所 |
振動、騒音が小さい |
長さの調節が比較的容易 | |
大口径の杭の施工が可能 | |
短所 |
泥水、排土処理が必要 |
小口径の杭の施工が難しい | |
杭本体の信頼性が既製杭に比べ小さい |
<オールケーシング工法イメージ図>
以上、今回は杭基礎工事の基礎知識についてご紹介しました。
参考文献)
「現場技術者のための土と基礎シリーズ 1 杭基礎の調査・設計から施工まで」 社団法人土質工学会(1983年2月)
「新版 よくわかる 杭基礎の設計」株式会社山海堂(1990年7月)
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