今回は『推進工法の基礎知識』について解説します。
目次
推進工法とは
下水道、ガス、電力、通信などのライフラインは、多くが地中に管きょとして埋設されています。
これらの管きょを地中に埋設させるには、地表を直接掘削して、管を埋設し埋め戻す開削工法と、地表を掘削せず地中を掘削貫通する非開削工法の2つがあります。非開削工法には掘削機(シールドマシン)で掘削し、掘進機内でセグメントを組み立ててトンネルを構築するシールド工法と、推進管を押し込む推進工法があります。
これらの管きょを地中に埋設させるには、地表を直接掘削して、管を埋設し埋め戻す開削工法と、地表を掘削せず地中を掘削貫通する非開削工法の2つがあります。非開削工法には掘削機(シールドマシン)で掘削し、掘進機内でセグメントを組み立ててトンネルを構築するシールド工法と、推進管を押し込む推進工法があります。
推進工法とは、発進立坑から到達立坑へ、先端に掘進機を取り付けた推進管をジャッキを使用して前進させ、発進立坑と到達立坑の間に管きょを構築する工法です。
推進工法は次のような場合に用いられます。
- 交通量の多い道路などで、地上からの掘削が困難な場合
- 軌道または河川を横断するため、地上からの掘削が困難な場合
- 管きょの埋設位置が深いため、地上からの掘削が不経済となる場合
- 市街地等の周辺環境や道路使用許可条件から、地上からの開削が適さない場合
推進工法の分類
推進工法は下記のとおりに分類されます。
推進工法 | 大中口径管推進工法 | 開放型 | 刃口式 |
密閉型 | 泥水式 | ||
土圧式 | |||
泥濃式 | |||
小口径管推進工法 | 高耐荷力方式 | 圧入方式 | |
オーガ方式 | |||
泥水方式 | |||
泥土圧方式 | |||
低耐荷力方式 | 圧入方式 | ||
オーガ方式 | |||
泥水方式 | |||
泥土圧方式 | |||
鋼製さや管方式 | 圧入方式 | ||
オーガ方式 | |||
ボーリング方式 (一重ボーリング式) |
|||
ボーリング方式 (二重ボーリング式) |
|||
泥水方式 | |||
取付管推進工法 | |||
改築推進工法 |
大中口径管推進工法
呼び径800-3000までの推進工法を大中口径管推進工法と言い、人が管内に入って作業することができます。推進工法は切羽が開放状態になっているかどうかで開放型と密閉型に分類され、さらに密閉型は主に、泥水式・土圧式・泥濃式に分類され、施工条件および土質条件で工法を選択します。
刃口式推進工法
推進管の先端に刃口を装着し、開放された切羽を人力や重機で掘削し、トロバケットなどで掘削土砂を搬出する工法です。
泥水式推進工法
掘進機のカッタチャンバ内に泥水を満たし、その泥水の圧力で切羽の安定を保持しながら掘削・推進する工法です。掘削した土砂は泥水とともに坑外の泥水処理機に送られ、土砂と泥水に分離し、泥水は再び切羽に送られ、土砂はダンプで運び出されます。
土圧(泥土圧)式推進工法
掘進機のカッタチャンバおよびスクリュコンベヤ内に掘削土砂もしくは掘削土砂に添加材を注入し泥土化したものを満たし、その土砂の圧力で切羽の安定を保持しながら掘削・推進する工法です。掘削した土砂は、スクリュコンベヤで排土量を調整しながら、ベルトコンベア・トロバケット・圧送ポンプなどにより坑外へ排出されます。
土圧式推進工法は添加材注入の有無により土圧式推進工法と泥土圧式推進工法に分類されます。添加材の注入は、一般にシルト、粘土の含有率が30%未満の場合に、土砂の塑性流動化を促進するために行われます。
土圧式推進工法は添加材注入の有無により土圧式推進工法と泥土圧式推進工法に分類されます。添加材の注入は、一般にシルト、粘土の含有率が30%未満の場合に、土砂の塑性流動化を促進するために行われます。
<トロバケット方式>
泥濃式推進工法
掘進機のカッタチャンバ内の掘削土砂に高濃度泥水を注入し、流動化させた土砂で満たし、その土砂の圧力で切羽の安定を保持しながら、掘削・推進する工法です。掘削した土砂は、排土バルブの開閉により間欠的に排土槽へ排出され、搬送可能な粒径以下に分級され吸引力により坑外へ排出します。吸引不可能な大きな礫はトロバケットにより搬出されます。
小口径管推進工法
呼び径700以下の推進工法を小口径管推進工法と言い、人が管内に入って作業することはできません。使用する推進管の種類により、高耐荷力方式、低耐荷力方式、鋼製さや管方式に分類されます。
取付管推進工法
地上、または地上付近より鋼製さや管を対象本管まで推進し、鋼製さや管内の土砂を取り除いた後、対象本管をコア抜きして取付管推進用の特殊支管を付けた硬質塩化ビニル管を接続する工法です。取付管は呼び径100-250までの硬質塩化ビニル管を基本とします。
改築推進工法
長期間の使用により構造的または機能的に低下した下水管きょを推進工法により破砕・排除しつつ新管を敷設する工法です。
推進管の種類
推進工法用管はこれまでの寸法規定から製品の信頼性と安全性を求めた性能規定とし(社)日本下水道協会に認定されており、次のようなものがあります。
規格番号 | 規格名称 | 呼び径 |
JSWAS A-2 | 下水道推進工法用鉄筋コンクリート管 | 800-3000 |
JSWAS A-6 | 下水道小口径管推進工法用鉄筋コンクリート管 | 200-700 |
JSWAS A-8 | 下水道推進工法用ガラス繊維鉄筋コンクリート管 | 800-3000 |
JSWAS K-12 | 下水道推進工法用レジンコンクリート管 | 200-1500 |
JSWAS G-2 | 下水道推進工法用ダクタイル鋳鉄管 | 250-2600 |
JSWAS R-3 | 下水道推進工法用陶管 | 200-450 |
JSWAS K-6 | 下水道推進工法用塩化ビニル管 | 150-450 |
長距離推進の定義
「推進延長が推進管呼び径の250倍を超えた場合,又は500mを超えた場合」を長距離推進と定義しています。長距離推進における主な検討項目は次の通りです。
- 工法の選定
- 推進力の低減方法
- 掘削土砂の搬出方法
- 測量の方法
- 作業員の安全確保(推進管内作業の制限)
土質分類について
土は、固体、液体および気体からなりたっています。一般には、土粒子のまわりに間隙があり、この間隙は空気と水とで占めています。土の分類は「日本統一土質分類」を基準としています。
土粒子の大きさと名称
下記の図の通り、土の粒径の大きさによって粘土・シルト・砂・礫に区分されています。
(JSFM111-1992 日本統一土質分類法)
粒径加積曲線
様々な粒径の土粒子がどのくらいの割合で混合されているかを表したものを粒度といい、粒度を調べるための試験を粒度試験といいます。粒度試験は土を分類するために、土の粒径毎にフルイ分け、通過百分率で表します。この結果をグラフに表したものを粒径加積曲線といいます。
<粒径加積曲線>
この粒径加積曲線から、均等係数を求めることができます。
通過百分率が10%の粒径をD10、60%の粒径をD60とすると、均等係数(UC)は次の式で表します。
通過百分率が10%の粒径をD10、60%の粒径をD60とすると、均等係数(UC)は次の式で表します。
UC=D60/D10
均等係数は粒径加積曲線の傾きを示し、均等係数が大きくなるにつれて粒度分布が広くなります。一般的にUCが5以下は「粒度分布が悪い」土といい、10以上は「粒度分布が良い」土といいます。
以上、今回は推進工法の基礎知識についてご紹介しました。
参考文献)
「推進工法体系Ⅰ推進工法技術編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「推進工法体系Ⅱ計画設計・施工管理・基礎知識編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「月間推進技術Vol.27 №6」(公社)日本推進技術協会(2013年6月)
「月間推進技術Vol.30 №4」(公社)日本推進技術協会(2016年4月)
「月間推進技術Vol.30 №5」(公社)日本推進技術協会(2016年5月)
「月間推進技術Vol.30 №6」(公社)日本推進技術協会(2016年6月)
「推進工法体系Ⅰ推進工法技術編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「推進工法体系Ⅱ計画設計・施工管理・基礎知識編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「月間推進技術Vol.27 №6」(公社)日本推進技術協会(2013年6月)
「月間推進技術Vol.30 №4」(公社)日本推進技術協会(2016年4月)
「月間推進技術Vol.30 №5」(公社)日本推進技術協会(2016年5月)
「月間推進技術Vol.30 №6」(公社)日本推進技術協会(2016年6月)
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『泥水式推進工法の基礎知識』はこちら
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